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執筆者の写真池永敏之

合格発表

更新日:2022年8月10日


  中学3年になると、難関校を目指す生徒たちはパワー全開です。先生方も進学実績を上げようと、授業中は優秀な生徒に難しい質問をよくするようになりました。これに対して生徒会長のK君は、難なく答えてみんなを驚かせました。彼はクラスのみんなから一目置かれる存在で、理数科が志望なのか、休み時間はよく理科年表を開いていました。ある日、彼は勉強に疲れたのか、机に脚を投げ出した状態で本を読んでいました。休み時間が過ぎても姿勢を改めようとしません。大丈夫かな?と思って見ていると、程なくクラス担任のSK先生が入って来て、K君を見るなり、普段は温厚な先生の顔色がサッと変わりました。K君が厳しく注意されたのは言うまでもありません。一つの点が優れていると、他の面もよく見えてしまう現象を「ハロー効果」と言います。私はこれによって、「頭のいい生徒=全ての面で優秀」と思っていたのが、この一件で、秀才にも欠点のあることを知りました。


 夏休み前、学校から3年生全員に主要5教科の要点を1冊に納めたサブノートと呼ばれる書き込み式の学習用補助ノートが配られました。机に積まれた「自由自在」などの分厚い参考書は、基礎から応用に至る全てが網羅されている反面、どこに重点を置いてアプローチすべきかをふまえた学習計画が立てられない私には不向きでした。受験まで半年しかない状況では、必要最低限の基礎をしっかりマスターしておくことが肝要です。このため夏休み以降は、このサブノートだけを繰り返し学習することにしました。


 受験が始まり、第一志望の私立高校には7人が挑戦し、私だけが不合格でした。みんなで合格発表を見に行った帰り、S君が代表して担任のSK先生に結果報告のための電話をしました。するとS君は私に振り向き、「先生が池永に代われと言っている」というのです。落ちこぼれの私は、恥ずかしい気持ちで一杯、電話に出たくありませんでした。努力不足を指摘されるに決まっているからです。ところが先生はそんなことや慰めの言葉などは一切なく、学校に来るようにとだけ言いました。


 学校で先生は、私に次のように話しました。

 君はみんなより若いと思うのです。かんたんに言えば、生まれたのが、早い人より1年おそいです。学習についても、人生についての考えも、これからどんどん発達するはずです。あわてないで、根気よい生活態度をつくってください。


 つまり、私の誕生日は2月22日だから、4月生まれに比べると約1年遅く、知能や精神の発達はこれからだから心配するなというのです。多くの生徒を見てきたベテランの先生ならではのアドバイスに、今でも感謝しています。



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